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襟かえを前に…舞妓さんのエンディングロード

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おふくに白襟が板についてきた頃、気がつけば、妹舞妓ちゃんがたくさんでて、おどりの会のパンフなどにも、だんだんと舞妓さんの先頭に近いところにお写真が載るようになってきます。

 

そろそろ、置屋のおかあさんやお姉さんから、「そろそろやなぁ…」と、襟かえの話が出てくるようになる時期でもあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞妓さんのお店出しのときのように、見習いさんという期間はもちろんありません。

 

舞妓さん自体が、芸妓さんへの長い見習い期間のようなものだからです。しかし、芸妓さんになる襟かえが決まりますと、さまざまな受け継がれた伝統のしきたりを踏んでいくことになります。襟がえの前には、「先笄(さっこう)」と呼ばれる髷に結い方が変わることが有名ですが…

 

実は、それまでにもさまざまなしきたりがあるのです。
お師匠さんのお許しもでて、襟かえの日取りが決まりますと、まず、舞妓さんのお衣装の帯あげの締め方が変わります。

 


(帯あげの違い.jpg)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帯の上に、真っ赤な帯あげが出ていたものが、結び目を一つ作り、帯の中にしまわれるようになるのです。若干、花街に違いはありますが…

 

祇園甲部などでは、その帯あげの締め方をしだすと、「○○ちゃん、襟がえが決まらはったんやね。おめでとうさんどす。」と、あちらこちらで声をかけてもらうことも多くなり、お茶屋さんの女将さんはじめ、花街のみなさんに、自然とお知らせすることになるのです。

 

その後、襟がえの当日からさかのぼって、3週間。芸妓さんになるための日々が、めまぐるしく過ぎ去っていきます。最初の1週間は、奴島田を結い、色紋付を着せてもらい、次の2週間は、先笄(さっこう)を結い、黒紋付を着せてもらうのです。花街によっては、赤襟に色紋付のところもあります。

 

もちろん、この3週間は、正装の3本の襟あしをかくことになり、
先笄(さっこう)を結う2週間は、お歯黒もされるのです。

 

(お歯黒.jpg)


お歯黒の意味は、昔の女性の身だしなみに使われていた意味もあるようですが、時代によっては、娘の成人を意味したり、若妻の習慣など、さまざまな説があるようです。

お歯黒は、黒く着色された蝋をあぶり、指で歯に塗るそうで、熱に弱いため、熱い料理や飲み物はこの時期は極力避けるらしく、襟かえ前のダイエットにもなるそうです(笑)
先笄(さっこう)の簪には、おめでたい鶴や松のはいった大振りなもの、亀のはいった縁起物をつけられ、地毛で結う舞妓さん最後の髷となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お座敷で舞うことのできる「黒髪」。

そして、忘れてならないのが、襟かえ前後の1か月近くの間だけ、お座敷で舞うことのできる「黒髪」です。

 

こちらは、普通の舞は5分弱程度のものが多いのに対して、倍ぐらいの長さ。また、舞の意味も、女性の愛の切なさを表現したものです。

やはり、この時期を迎える襟かえ前後の舞妓さん・芸妓さんでないと、色香をも醸しだす、舞を通して情景を表現することなどできないですよね。…と、
当然のことながら、舞妓さんとしての集大成、芸妓さんとして初めて舞うものとして、大変難しいもので、襟がえの日取りが決まったときから、お師匠さんの厳しいお稽古が始まるそうです。

 

お披露目期間には、ご挨拶のいくお座敷ごとに、何度も舞うことになり、夜、お仕事が終わり、お衣装を脱ぐと、腰が立たないぐらいの大変な日々が続くそうです。その中で、いよいよ舞妓さんを卒業し、芸妓さんになるんだという厳しさを、実感として身につけられていくのだとも聞きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、いろいろな想いを胸に、置屋のおかあさん、お茶屋さんの女将さん、お世話になったご贔屓のお客様、お姉さん方に、先笄の元結にはさみを入れてもらい、舞妓さん最後の日を迎えるのです。

 

仕込さんからの苦労の日々、何度も立ちどまってしまった舞妓さん時代、毎日、苦労して高枕で寝ていた日々… 

 

もう高枕を使うことも無く、そして、これから踏み出す芸妓さんへの一歩。

「この断髪式に、舞妓さんの頬をつたう一筋の涙ほど重いものはない…。」と、ある置屋のおかあさんが話してくださいました。
我が娘として愛情をもって、何人もの舞妓さんを育てられているからこその、おかあさんのひと言です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人の少女が花街の門をたたき… 襟かえの日を迎える…

決して、ひとりの少女の物語ではなく、花街に生きる、ある家族の物語なのだと、ご理解いただけるでしょうか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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