言わずと知れた『一見さんお断り』の真相とは!?
「一見さんお断り」で有名な京都・花街のお茶屋さん。敷居が高く、俗世間とはかけ離れた“別世界”というイメージを持たれている方が多いようですが、元をたどれば、江戸時代の初め頃に庶民のあいだで賑わいをみせた水茶屋がはじまり…。
水茶屋は、社寺の境内や道傍で、湯茶をもてなす茶屋のことで、当時は、京都の神社や仏閣を訪れる巡礼者や街道の旅人たちのあいだで親しまれていました。つまり、元々は、一般的にも広く人々の生活に溶け込んだ非常に身近なものだったのです。
やがて、祇園の界隈で営業認可されたお茶屋さんは100軒を越えるまでとなり、お茶や白湯がお酒に、お茶菓子が豆腐を使った“つまみ料理”などに代わっていき、その人気と共に茶屋の間だけではお客さんが入りきらなくなったため、奥座敷が作られるようになりました。そこで働く女性たちが、客寄せのために、踊りを披露したり、三味線を弾いたりしたのが、舞妓さんの芸能のルーツになったともいわれています。
祇園の最盛期といわれる19世紀のはじめごろには、700軒以上のお茶屋さんに総数3000人以上、大正時代の初期にも、1000人以上の芸妓さん、舞妓さんが存在し、幕末には高杉晋作や西郷隆盛らの志士が、大正には谷崎潤一郎や夏目漱石などの文豪たちによって社交の場として愛されてきました。
そして、時は過ぎ、現代…。お茶屋遊びは、ごく一部の限られた富裕層の人たちだけに許された娯楽の極みだと思われがちですが、実際はちがいます。お茶屋を訪れるお客さんには、お医者さんや社長さんもいれば、サラリーマン、自営業、個人事業主の方もいますし、専業主婦の女性だっています。ですから、必ずしも一般人が入れない世界ではないのです。
では、なぜ“一見さん”は歓迎されず、彼らだけお座敷に上がることができるのでしょうか?
その理由はシンプルです。
お茶屋さん、女将さんとの間に結ばれた固い絆=『家族』のような信頼関係があるからです。
一つひとつの“ご縁”を命のように大切にするお茶屋さん。
花街では、信頼のおけるお客さんからまた別のお客さん…と、“人伝い”のつながりによって人の輪を広げていくのが流儀なのです。
一方、長年ご贔屓のお客さんにとって、お茶屋という空間は、 “我が家”のようなもの…。
このプライベートな場に、「面識のまったくないお客さん=一見さん」を入れ、酒宴をひらくということは、見ず知らずの通行人をいきなり自宅に招き入れて食事を共にすることと同じです。
「一見さんお断り」といわれると、突っぱねられたような気分になりますが、その言葉の裏には、
商いを営む側として、自ら危険を招き入れるような真似は最初からしない、ということが第一にあるのです。
しかし、これと同時に、ご贔屓にしてくれるお客さんには極上のサービスをご提供したいというおもてなしの心が奥底にはあります。
日本では『お客さまは神様』という精神が未だ強いですが、お茶屋さんという伝統を重んじる特殊な形態においては、20年、30年以上ものあいだ、ずっと通い続けてくれるお客さんと、ぶらり途中で立ち寄った初めてのお客さんを同等に扱うことはありえないこと…。
長い時間をかけて培ってきた絶対的な人間関係があるからこそ、お茶屋さんはその人を特別大切にし、その人を喜ばせるためにあらゆる思考を凝らして力のかぎりを尽くすのです。
世の中の大部分では、需要に対する供給をただ効率良く満たすために、『誰にでも、手軽に、スピーディに…』という類いのサービスが重宝されがちですが、長くお付き合いしているからこそ、そのお客さんのお人柄、その人が望むこと、望まないことも理解できて、本当に喜ばれるサービスが提供できる…これは非常に理に適ったサービスのあり方だといえます。
『お茶屋さん』は一般の人には手が届かない世界?
「じゃあ、やっぱり、一見さんは取り付く島もないですよね…」
これまでのお話からすると、こんな風に思ってしまうかもしれませんが、“ご縁”さえあればお茶屋さんに行き、舞妓さんとお話したり、お座敷遊びに興じることは至って可能です。
お茶屋さん、女将さんとの間に信頼関係を持つ『紹介者』がいれば、その人を介してお座敷に上がることができるからです。
言い換えれば、一見さんであっても、ひとつのご縁をきっかけに、お茶屋さん、女将さんとの信頼関係を築き、自らお座敷を頼めるようになる可能性は大いにあるということ…。
舞妓倶楽部は、イベント【舞妓さんと楽しむ京都の四季】を通して、あなたをお茶屋さんにご紹介する『紹介者』となり、ご縁をつなぐ“架け橋”になります。
これを機に、「舞妓さんに逢ってみたい!」「本物のお座敷に上がってみたい!」というあなたの願いをぜひ現実に叶えてください。
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*注意点*
心に留めておいていただきたいことがひとつあります。
従来、紹介者によってお茶屋さんに紹介された『新しい人=一見さん』が、仮にお花代(お勘定)を踏み倒したり、お座敷で無礼な振る舞いをしたりすれば、責任を取るのは紹介された本人ではなく、その紹介者となり、一番恥をかくのも紹介者です。
最悪の場合、その紹介者とおかあさん(女将さん)の関係を壊してしまい、お茶屋さんに行くことができなくなることもあります。
「連帯保証人」というと、大げさに聞こえるかもしれませんが、一見さんをお茶屋さんに紹介する『紹介者』の責任は、それくらいの重みをもっている…。これだけは理解しておいてください。